田端高台の鍼灸院 調和堂鍼灸治療院
日本を始め、世界中の複数の研究結果を基に、鍼灸治療の安全性についてご説明致します。
鍼灸免許取得者の標準的な鍼灸治療で、適切な衛生管理が行われていれば、重大な有害事象(副作用)は非常に稀です。
鍼灸治療の安全性については、世界中で様々な研究が行われています。
日本、台湾、ドイツ、世界中の小規模から大規模な研究を元にご説明します。
日本における多施設前向き研究調査1)
日本の教育機関(専門学校や大学)に付属する鍼灸院で、約230人、臨床経験平均9年の鍼灸師が約2200人の患者さんに対して、合計14000回の鍼灸治療を対象に行ないました。
結果から鍼治療と灸治療は、報告された有害事象のほとんどが軽度で一時的であるので、安全であると結論付けられています。
ただし、この調査は小規模なので、危険性を明確に定義するには限界があることも指摘されています。
台湾での鍼治療後の気胸の発生率に対しての研究調査2)
台湾の国民健康保険研究データを1997年から2012年まで追跡 。約41万人の患者様に対して合計540万回の鍼治療が行われ、鍼治療後7日間に発生した気胸のデータを収集。
この研究では、鍼治療後の入院を必要とする気胸の発生率と、その危険因子が詳細に分析されました。
・鍼治療後の気胸とは
鍼治療後の気胸とは、鍼治療の際に肺に穴が開き、肺から空気が漏れて肺がしぼんでしまう状態の事です。
呼吸が困難になり、保険医療機関での処置が必要な時もありますが、安静にして経過観察で自然治癒する時もあります。
気胸には自然気胸もあり、20歳前後で長身でやせ型の男性や、高齢で喫煙者で肺疾患の患者さん、女性では生理(月経随伴性気胸)に伴い突然発症する事もあります。
台湾での大規模な調査では、鍼治療後の気胸の発生率は非常に低いが、、特定の病気(肺の病気等)や男性が、その危険性を高めることが明らかになりました。
ドイツで行われた大規模な研究調査3)
ドイツ国内で鍼灸治療を行っている約1万4千人の医師が、約23万人の患者さんに対して行った合計220万回の鍼灸治療が対象。患者さんの平均年齢は約51歳で、約74%が女性でした 。
ドイツの大規模な調査では、鍼灸治療は比較的安全な治療法であり、重篤な副作用は非常に稀であることが示されました。
今回の調査結果から、観察されなかった重篤な有害事象は95%の確率で患者7万6千人に1人程度の発生率であると推定されています。
世界中の鍼治療に関連する大規模な調査4)
過去に行われた臨床研究を総合的に分析した大規模な研究調査です。
世界中の様々な地域を対象として(日本、韓国、中国、香港、英国、スウェーデン、ブラジル、ドイツ)21の異なる研究、約1290万回もの鍼治療のデータが対象です。
これらの結果から、研究者たちは鍼治療が比較的安全な治療法であると結論付けています。
しかし、有害事象の定義や評価方法には依然として研究間でばらつきがあるため、より標準化された評価ツールの開発や、鍼治療による望ましい反応と有害事象を明確に区別するための基準、患者側の危険因子を特定する研究の必要性も提言されています。
鍼灸治療の安全性についてのまとめ
今回ご説明した複数の大規模な研究調査からも、鍼灸治療は医療行為全体の中でも比較的安全性が高い治療法であると考えられます。
多くの副作用は微細な出血や内出血(青アザ)や痛みといった軽度で、一時的なものなので、過度に心配する必要はありません。日本での通常の鍼灸治療は鍼が細いので、軽度の副作用の発生率は外国に比べ低いようです。
しかし、稀に気胸や神経損傷、感染症といった重篤な有害事象も報告されています。
安全性を重視されるなら、鍼灸免許取得者の標準的な鍼灸治療で、適切な衛生管理が行われている保健所届出済みの鍼灸院での鍼灸治療をお勧めします。
参考文献
1)Furuse N,et al:日本における鍼灸に関連する有害事象の多施設前向き調査
Med Acupunct 2017 Jun 1; 29(3): 155–162
2)Lin SK, et al:台湾での鍼治療後の医原性気胸の発生率
Acupunct Med. 2019 Dec;37(6):332-339. doi: 10.1136/acupmed-2018-011697. Epub 2019 Aug 21.
3)Witt CM,et al:鍼治療の安全性:229,230人の患者を対象とした前向き観察研究の結果と医療情報および同意書の導入
Forsch Komplementmed. 2009 Apr;16(2):91-7. doi: 10.1159/000209315. Epub 2009 Apr 9.
4)Bäumler P, et al:鍼治療関連の有害事象:前向き臨床研究の系統的レビューとメタアナリシス
BMJ Open. 2021 Sep 6;11(9):e045961. doi: 10.1136/bmjopen-2020-045961.