さまざまな研究で片頭痛患者の痛みや生活の質の改善に寄与することが明らかとなり、頭痛の診療ガイドラインに非薬物療法の選択肢のひとつとして掲載されている鍼治療ですが、片頭痛患者の脳卒中のリスク軽減に効果的かを調べた研究があります。
研究に不明な点はありますが、良好な予防効果を持つことが示唆されました。
この研究では台湾国民健康保険研究データベース から無作為に選ばれた200万人、19年間のデータを使用しています。
片頭痛の患者約12万人を対象にし、鍼治療を受けた患者を鍼治療群、それ以外の患者を非鍼治療群としています。
また、除外基準により20歳未満の患者や過去に脳卒中の既往のある患者を除外しました。両群を年齢や性別、職業、月収、ベースラインの共存症、服薬等を合わせた群を1:1の割合で二つに分け、脳卒中の発生率を主要な結果としました。
鍼治療群・非鍼治療群ともに1354名が解析対象となり、男女比は3:7でした。
研究では、鍼治療群と非鍼治療群の両方で脳卒中患者の割合が最も高かったのは40~59歳であり、平均年齢は47歳でした。また、精神疾患、高血圧、高脂血症が最も多かった共存症でした。
鍼治療群のうち約390名(1000人、年当たりの発症率は21人)、非鍼治療群のうち約640名(1000人、年当たりの発症率は49人が追跡期間中に脳卒中を発症しました。
また、この効果は性別や年齢、都市化レベル、職業、収入、ベースラインの共存症、服薬に関わらず、すべての年齢層の患者およびベースラインの併存疾患の有無においても見られました。
片頭痛患者では、3つ以上の薬を服用している場合に脳卒中の発症リスクが低下していました。
19年間の追跡調査では、鍼灸治療を受けた片頭痛患者は、鍼灸治療を受けなかった片頭痛患者と比較して、脳卒中発症リスクを約60%減少させることがわかり、脳卒中に対して良好な予防効果を持つことが示されました。
・前兆のある片頭痛、前兆のない片頭痛など分類の異なる脳卒中のリスクについては検討されてない。
・喫煙者、経口避妊薬使用者等リスクが増加することが示唆される者が検討されてない。
・ 鍼灸治療の回数、頻度、期間、鍼を打つ部位と脳卒中のリスクとの関連は検討されてない。
参考文献
Liao CC,et al. 鍼治療は片頭痛患者の脳卒中のリスクを減らすのに効果的である:19年間の追跡調査を伴う実際の大規模コホート研究
Int J Environ Res Public Health. 2023 Jan 17;20(3):1690