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2025/12/11

アメリカの救急外来で行われている鍼治療

救急外来を受診された急性の筋肉や骨の痛み(首、腰、背中、手足等)の患者さんを対象に、通常の治療(投薬等)に加えて鍼治療(耳鍼または体表鍼)を併用することの効果を調査した研究をご紹介します。

 

アメリカのデューク大学にある救急外来で行われた鍼治療236名の結果です。平均年齢46歳(19歳~85歳)、女性56%男性43%、黒人45%、白人34%、その他の人種18%と様々な人種や年齢を対象に行われました。

 

この研究の結果、救急外来での鍼治療は安全で、患者さんに大変受け入れられやすく、通常の治療のみの場合と比べて、痛みをより大きく軽減できることが示されました。


・救急外来という限られた時間と場所の中でも、鍼治療が通常の治療に上乗せして安全に実施できました。

 

・鍼治療を受けた患者さんは、丁寧な対応と鍼治療に対し、非常に高い満足度でした。

 

・通常の治療のみの場合と比較し、鍼治療の併用は、治療1時間後の痛みを有意に減らしました。

 

・様々な人種や年齢の患者さんに効果がありました。

研究の目的と背景

皆さんは、急な痛みで救急外来に行った際、どのような治療を受けられましたか。

 

首、腰、背中、手足などの痛みは非常に重度になることが多く、従来の投薬治療だけでは痛みを完全に抑えることが難しいという課題があります。

 

また、薬剤には副作用のリスクも伴います。さらに、急性期の痛みが慢性的な痛みに移行するのを防ぐためにも、効果的な急性期の痛みの管理は重要です。

 

この研究の目的は、救急外来での痛みに対して、鍼治療が実現可能か、患者さんに受け入れてもらえるか、そして通常の治療に加えて有効かどうかを明らかにすることでした。

 

現在、アメリカの多くの救急外来では、痛みの治療として、投薬治療(非ステロイド性抗炎症薬や、場合によってはオピオイドなどの強い痛み止め)が主な選択肢となっていて、オピオイドの過剰処方による依存症や死亡が社会問題となっています。

 

救急外来での鍼治療は、副作用の少ない非薬物療法として、オピオイドの使用を減らすための有効な手段として期待されています。

鍼治療と鍼治療+通常治療を比較

この研究では、236名の患者さんに協力して頂きました。患者さんを以下の3つのグループに無作為に分け、効果を比較しました。鍼治療の時間は20~30分で、イスに座ったり、ストレッチャーに寝たままで行いました。

 

1.耳鍼+通常の治療

耳の特定のツボ最大5か所に、鍼を打つ

 

2.体表鍼+通常の治療

鍼灸師が、頭、首、手足等、服を着たまま行いやすい部位のツボを選んで鍼を打つ

 

3.通常の治療のみ

医師の判断で行われる非オピオイドやオピオイドなどの投薬治療や、アイシング、湿布などの通常の治療のみ

 

*このグループの患者さんには、鍼治療と同様に鍼灸師との問診の機会を設けることで、追加の対話によるプラセボ(思い込み)効果を考慮する工夫がされました。

 

すべての参加者は、救急外来の医師や看護師によって行われる通常の治療を受けました。そして、治療の1時間後に、11段階の数値評価スケール(NRS)で痛みの変化を評価しました。

結果

まず、救急外来という多忙な環境の中でも、鍼治療は実現可能であり、患者さんの受け入れも非常に高いことが示されました。鍼治療を受けた患者さんの多くが、治療に高い満足度を報告しています。

 

鍼治療の副作用(内出血、鍼を打った場所の痛み等)は軽度で一時的なものがほとんどであり、重篤な有害事象は極めてまれであることも確認されています。

 

最も重要な痛みの軽減効果についても、良い結果が得られました。治療1時間後の痛みの数値評価スケール(NRS)の変化を比較したところ、通常の治療のみのグループと比べて、鍼治療を併用したグループの方がより大きく痛みが軽減しました。

まとめ

今回の研究により、救急外来という特殊な環境においても、鍼治療は急性の筋肉や骨の痛みの管理において、安全に実現でき、患者さんに大変受け入れられやすい治療法であることが分かりました。

 

通常の投薬治療と組み合わせることで、通常の治療だけの場合よりも、有意に痛みを軽減する効果があることも示されました。

 

特に、オピオイド等の薬剤使用を減らすことが課題となっているアメリカでは、鍼治療は副作用のリスクが低い非薬物療法として、非常に重要な役割を果たす可能性があります。

 

この研究は、急性期の痛みで困っている様々な人種や年代の患者さんのための新しい選択肢として、鍼治療の導入を強く後押しするものです。

 

今後は救急外来における鍼治療が、より多くの場所で広く導入されるよう、更なる研究と検討が進められることが期待されます。

 

日本とは医療制度や社会問題が違うので、国内の救急外来での導入は困難ですが、試験的導入 としてはアメリカ、オーストラリア等の一部で行われていて、薬に頼らない急性期の疼痛管理として検討されています。


参考文献

Eucker SA,et al.急性筋骨格系疼痛管理のための救急外来鍼治療の適応的実用的ランダム化比較試験.Ann Emerg Med. 2024 Oct;84(4):337-350

 

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